はじめに
包装印刷工場がフレキソ印刷機を選定する際、機械構造と印刷基材の不適合、カラーユニットの過剰構成、駆動方式と注文ロットのミスマッチといったトラブルがよく発生します。本稿は標準化された判断手順に沿い、加工工場が素材・受注内容・工場環境に合わせて適切な機種を選ぶための解説です。
手順 1:生産に必要な基礎条件を数値化する
機種選定の前段階で業務指標をフレキソ印刷機の導入条件へ落とし込みます。
印刷基材の集計:日々加工する素材を整理し、紙の目付範囲を記録し、クラフト紙・厚紙・コート紙・不織布・複合紙・医療用特殊紙などに分類します。
印刷パラメーターの集計:よく使われる印刷幅・版周長・印刷カラー数、受注で主流の運転速度帯を整理します。
生産能力の計算
1 時間あたりの理論生産量=毎分の材料送りメートル数 ×60。月間総受注量から、装置に必要な材料送り速度のレンジを算出します。工場環境の確認:工場の縦横高さ・電源仕様を記録し、機械の点検や分解作業用スペースを確保し、本体外形寸法を確認します。また水性インキ、UV インキの使用割合も把握します。
手順 2:機械構造ごとに技術分類を行う
スリーブ式フレキソ印刷機(FM‑TS):スリーブ版ローラーにより版交換が簡単。全サーボ駆動で歯車ピッチの制約がなく、水性インキ・UV インキに対応。デジタル全検査、先見見当合わせ機能を搭載し、仕様切り替えの多い受注に適しています。
全サーボスライド式フレキソ印刷機(FM‑FS):サーボにより印刷圧を自動調整し、版ローラー位置を記憶。ターレット式無停機ロール交換機構を備え、目付 30‑400g の幅広いロール素材に対応します。
ペタル式フレキソ印刷機(FM‑CS/FM‑C):花びら型のワンタッチ版交換構造、全サーボ無軸駆動により加減速時も見当精度を安定させます。紙袋・紙コップ・段ボールの先刷り業務に適しています。
ワイドウェブ先刷り用フレキソ印刷機(FM‑S):厚肉鋳物フレームで高速運転に対応、サーボ式先見見当合わせを搭載。大量ロットの段ボール先刷り、牛乳パックの印刷に向きます。
ユニット式フレキソ印刷機(FM‑A/FM‑B):除塵・コロナ処理・ダイカット・スリットなどのオンライン工程を増設可能。閉ループ張力制御と電子蛇行補正により各種紙材や不織布に対応します。
医療包装フレームコーティング付きフレキソ印刷機(FM‑YL):印刷と裏面フレーム糊塗りを一体で実行。糊濃度自動制御、ゾーン別ダクト温度調節機能を備え、医療用手袋の包装など特殊用途向けです。
高速スタック式フレキソ印刷機(FM‑VSP):設置面積が小さく、独立したサーボ駆動、共通乾燥システムにより消費電力を抑えます。紙・フィルム・複合素材に対応可能です。
手順 3:主要パラメーターの適合チェック
印刷幅の確認:受注の最大印刷幅は、装置の最大通紙幅を超えてはなりません。
駆動方式の確認:仕様の切り替えが頻繁な現場は、版周長の歯車制約がない全サーボ無軸駆動機種を優先します。
カラーユニット数の確認:受注の最大色数に対し、機械のカラーユニット数が十分である必要があります。
乾燥ユニットの確認:インキ種別に応じ、熱風・赤外線・UV 乾燥を組み合わせて選定します。
特殊工程の確認:医療包装の裏面塗工が必要な場合は、フレームコーティング機能付きの専用機種を選びます。
手順 4:受注構成と生産環境から機種を絞り込む
条件による選定基準は下記の通りです。
仕様変更・版交換の頻度が高い → スリーブ式またはスライド式のフレキソ印刷機シリーズを優先
紙袋、紙コップ、段ボール先刷りの受注割合が大きい → ペタル式機種を選択
大量ロットの段ボール先刷りを主力とし、高速生産を求める → ワイドウェブ先刷り機種を選択
ダイカット・スリットなど後加工をオンラインで行いたい → ユニット式機種を選択
裏面塗工を伴う医療包装の受注がある → フレームコーティング付き専用フレキソ印刷機を使用
工場スペースが狭く、多種多様な素材を扱う → 省スペースな高速スタック式機種を選択
最後:機種選定時の簡易チェック項目
決定前に 4 項目を確認してください。
印刷素材の目付・種別が装置の対応範囲内に収まっている
印刷幅・版周長・カラー数がピーク時の受注に対応できる
理論上の材料送り速度が必要な生産能力を満たす
機械本体寸法と電源環境が工場に適合する
複数種類の素材を取り扱う場合は、各受注の割合を算出し、最も多い業務に適した装置を優先します。パラメーターが限界値となる受注については、長期的な事業計画を踏まえてオプション追加を検討してください。